愛着あるものをいつまでも。ダーニングは、長く寄り添う心地よさが味わえる繕いの方法

写真協力:野口光 文:つくりら編集部

「ダーニング」という繕い方法を知ったのは、数年前のことです。きっかけはテキスタイルデザイナー、野口光さんの本でした。

野口さんの本によれば、ダーニングとは、英語で「繕う」を意味する言葉で、イギリスに昔から伝わる家庭での繕い方法なのだそう。野口さんがダーニングに出合ったのはイギリス。ニット・テキスタイル研究家が営む手芸屋さんを訪ねたとき、ダーニングが施されたカラフルなセーターを目の当たりにし、衝撃を受けたと言います。

「繕うことが『新品同様に見せること』『繕い跡を見せないのがお約束』と考えていた私は、この「見えるように繕う」という単純な針仕事が、このような表現手段になり得ることを思い知らされ、目からうろこが落ちるような衝撃的な経験となりました」(『野口光の、ダーニングでリペアメイク』より)

 

ダーニングマッシュルームと針と糸があれば、すぐに始められる

ダーニングは、「ダーニングマッシュルーム」と呼ばれるきのこ形の可愛らしい道具と、針と糸があれば、いつでも、どこでも手軽に始められるもの。ダーニングマッシュルームのなだらかな丸みは、繕いたい生地を適度に広げて縫うのにちょうどよい形なのです。この丸みは、おたまや底が丸いサラダボウルなどの日用品でも代用できるのだそう。

ダーニングには、その生地の状態に合わせた繕い方がいろいろあります。野口さんの本には、穴があいてしまったときには、織物のようにタテ糸とヨコ糸を交互に掛けて面をつくる「バスケットダーニング」、すり減ってしまったときには、ゴマシオのような針目でザクザクと縫っていく「ゴマシオダーニング」などが紹介されています。

 

その人なりの繕い方を見つける楽しさ

好みの色や糸を使って生地を刺し埋めていくダーニングは、画用紙にクレヨンで落書きするみたいな楽しさがあります。

とはいえ、実際に繕ったお洋服をためらいなく着こなせるか、というと、恥ずかしい気持ちが勝ってしまうのも正直なところ。野口さんのもとにも、ダーニングの本を出版後、「人の目が気になり、ダーニングした服を着ることに抵抗がある」、「繕いたいけれど目立つと恥ずかしい」という声が寄せられたそう。

今年出版された野口さんの新刊、『野口光の、ダーニングでリペアメイク お繕いの本』には、そんなさまざまな声に応えるべく、その人になじむダーニングのコツが紹介されています。

「『ダーニング=目立つように繕う』ではありません。あくまでも『もう少し着たい、捨てるにはもったいない』という気持ちからはじまる実用的な針仕事です」(『お繕いの本』より)

『お繕いの本』には、マフラーや手袋、子ども服など、ダーニングの模様があることがアクセントになるような作品もたくさん紹介されていて、「これなら実際に身につけられるかも」。そんな気持ちにさせてくれます。

 

ダーニングの魅力に直接、触れられるイベント

定期的にワークショップなどを開催している野口さんですが、今月は、ダーニングの魅力に触れられるイベントが、東京で2つ開催されます。

1つめは、東京・仙川のギャラリー&ショップ「0.5grm」で開催される「HIKARU NOGUCHI首元の装いとダーニング」、そして2つめは、東京・六本木の「605 gallery」で開かれるポップアップイベント、「こころから暖かくなる 2020 繕う 編む 巻く 冬支度」です。

「0.5grm」では、ダーニング資材やオリジナルニット小物の販売を行うそう。12月5日には、野口さんによる対面ワークショップも開催。六本木のポップアップイベントは、繕う、編む、巻くがテーマ。ダーニングを通して愛着のあるものを繕うことや、自らの手で編む創造性などを伝えながら、心から暖かくなる生活の提案をするそう。

繕うことの楽しさと可能性。この冬、ダーニングを始めてみませんか?

 

HIKARU NOGUCHI首元の装いとダーニング」

期間: 2020.12.4 (Fri)- 21(Mon)
時間: 11:00〜17:00 *12、13、15日休み
12/5(土)14:00〜16:00は、ダーニングのワークショップ開催のため、13:30〜16:30にご来店をご希望の方は予約制。
会場:陶と布 0.5gram
東京都調布市緑ヶ丘1-10-22-2階
03-6336-5145
mail@0-5gram.com
https://www.instagram.com/reitengogram/

 

「こころから暖かくなる 2020 繕う 編む 巻く 冬支度」

期間: 2020.12.11 (Fri)、12(Sat)、13(Sun)
時間: 13:00〜20:00(11日)、11:00〜19:00(12日)、11:00〜18:00(13日)
会場:605gallery
東京都港区六本木7-5-11 カサグランデミワ605号室
(国立新美術館正門隣、レンガのビル6F)
https://www.instagram.com/605gallery/

そのほかのダーニングの情報は、野口さんのサイトをご覧ください。
https://darning.net/

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