ぽれぽれ福祉園のものづくり 「しんじゅQuality ハンドメイドマーケット」 2018.3.8(Thu)-3.14(Wed) 東京

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ぽれぽれ福祉園のものづくり 「しんじゅQuality ハンドメイドマーケット」 2018.3.8(Thu)-3.14(Wed) 東京

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「人に喜んでもらえるものがつくれたら・・・」。そんな思いで知的障害者のものづくりを応援している人たちがいます。思い切って百貨店で開催するハンドメイドマーケットへの出展を決めた「ぽれぽれ福祉園」。クリエイターを巻き込んでのものづくり活動を取材させていただきました。

撮影:奥 陽子 取材・文:つくりら編集部

「私がお手伝いをしている施設が、今度、百貨店のハンドメイドマーケットに出展することになりました。よかったら制作現場を見に来ませんか?」

長いことハンドメイドの世界で講師を務めてきた作家・横川博子さんから、そんな連絡がありました。

 

スウェーデン刺繍を元にした土台布づくり

横川さんが手伝っているのは、新宿区立新宿生活実習所。ここは社会福祉法人 東京都手をつなぐ育成会が運営している知的障害者をサポートする施設で、「ぽれぽれ福祉園」という愛称で親しまれています。「ぽれぽれ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆったりという意味。

この実習所を利用するのは18歳から62歳までの老若男女。10時から16時までの間、こちらで過ごし、散歩やダンス、絵画や陶芸などの創作、パッチワークや刺繍といった手芸作業まで、さまざまな活動を行なっています。

実習所にお邪魔させていただいたのは、手芸の作業時間。ちょうどハンドメイドマーケットに出品するための準備が佳境を迎えている頃でした。

そこで見せていただいたのが、利用者が取り組んでいる土台布づくり。クロスステッチ用の布に刺繍糸を刺していく作業で、スウェーデン刺繍が元になっているそう。

土台布づくりに取り組む利用者に、支援員と呼ばれる職員がついて作業が進みます。

支援員が引いたうすいガイドラインに沿って、ひと針ひと針、刺していきます。

土台布づくりは、毎日、数時間の作業で1列か2列進みます。気分が乗ったら続ける、無理強いはしない。楽しく取り組めることが第一のゆっくりとしたペースなので、1枚の布ができ上がるのは1年がかりです。

下の写真は利用者が刺し終えた土台布の数々。比較的目が揃っている布は支援員が引いたガイドラインに沿って刺し進めたもので、糸の配色も支援員が具体的に選ぶことが多いそう。

なかには目が不揃いの布も。手芸作品となると、目がきちんと揃っていなければなりませんが、アートという視点で眺めると、これはこれで素敵、味があるなあと思ってしまいます。

 

百貨店で求められる品質に近づける

今回、ぽれぽれ福祉園が参加するイベントは、いくつかの実習所や福祉施設が合同で出展するもの。仕事支援センターから話が持ちかけられました。今までも福祉関連のイベントで作品を販売したことはありましたが、百貨店は初めての試みだと言います。

「百貨店での販売となると、福祉のご愛嬌では通用しません。品質など細かい部分の配慮が必要になります」。そう話してくれたのは、支援員のひとり、永吉和美さん。今回のイベントの取りまとめ役です。

商品タグをしっかりつくることもその一環。出品する作品は「ぽれぽれアート」と名づけられ「一人ひとりが時間をかけて、多彩な色と様々な道具を使用して自由に表現した作品です。・・・」とのメッセージが綴られています。

モチーフとなったイラストは、利用者が描いた絵からとったものです。

 

プロの力を借りてチームで仕上げる

手仕事のぬくもりが伝わる魅力的な作品にしたい。そんな支援員たちの願いに、力を貸しているのがハンドメイド作家やクリエイターの方々です。そのなかでクリエイティブ・ディレクター的役割を担っているのが、今回、連絡をくださった横川博子さん。布小物からアクセサリーまで幅広いジャンルで手づくりに携わってきました。

「実習所の利用者、支援者、そして私のようなクリエイターが一緒になって、売れるもの、人に喜んでもらえるものがつくれたらいいな。頑張ってつくったものが製品として販売できることをアピールできたらと思います」


▲クリエイティブ・ディレクター的な役割を担い、作品制作のサポートを行う横川博子さん。

自身の手づくり仲間も巻き込み、利用者がつくり上げた土台布を次々と作品に仕立てていきます。

「こんなふうに内側も可愛らしく、ひと工夫しています」と横川さん。人気アイテムのがまぐちは、口金に真っ赤なポンポンブレードをあしらい、内布も同色のプリント柄を合わせました。

取材にお邪魔した日は作品の締切日。納品前に入念にチェックを行なっています。

こちらは巾着。土台布がプレーンな布に映えます。

土台布で刺繍ブローチをつくり、がまぐちとお揃いに。土台布を最大限に生かしながら、お客様の欲しいツボにはまる魅力的な作品に仕立てるあたりは、さすがプロのディレクションのなせる技。

利用者がほぼ一年がかりでつくり出す、唯一無二の土台布。そこに潜むアート性を生かしながら、どうやってお客様に喜ばれる実用品として仕立てていくか。ぽれぽれ福祉園の新しい試みはまだ始まったばかり。試行錯誤を繰り返しながら一歩ずつ前に進んでいます。

展示会名:しんじゅQuality ハンドメイドマーケット
期間: 2018.3.8(Thu)-3.14(Wed)
場所:新宿マルイ本館B1F
東京都新宿区新宿3-30-13
開催時間:11:00〜21:00 *最終日は19時まで
お問い合わせ先:03-3354-0101(新宿マルイ本館)

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