vol.18

ケチなタコ

写真・文/トニー・ウー 翻訳/嶋田 香

写真家トニー・ウーさんの「トニーと海の物語」第18回目です。これまで、とても大きな海の生物「クジラ」たちとの様々な出会いを見てきましたが、今回はまた、趣がガラッと変わって、こんな世界があるんだ!と思わずクスッと笑ってしまう海の中の生き物の登場です!トニーさんの前で果たしてどんな雄姿(!?)を見せてくれたのか・・・まずは、そっと覗いてみてください!!

ある時、オスカーという名前のタコに出会いました。

 

 

ビンの中で、ひとり暮らしをしているタコくんです。

 

 

オスカーは、ちょっぴり気むずかし屋。

 

 

なにしろ、僕が「こんにちは」って挨拶しようとしたら、

 

 

シッ、シッ、と僕を追い払って、

 

 

シュッと、ビンに逆もどり。

 

 

そして、わざとらしく僕の目の前で、ガラスのドアを閉じてしまったんですよ。

 

 

でも、これくらいじゃ気がすまん、とばかりに、このすぐ後にまた失礼なことをしました。タコならではの、とびきり便利な技で……

 

 

自分の家をガシッとつかむと、そのまま歩いていってしまったんです。

 

 

トコトコ、スタスタとスピードを上げて、どう見ても、「仲よくしようよ」という僕からの誘いを嫌がっているようす。

おまけに、「ついてくるなよ! 仲よくなんてするもんか」って言っているみたいに、体がどんどん赤くなります。

 

 

しまいにオスカーは、「もうたくさん」と立ち止まると、くるりとこちらに向き直りました。

僕を追い払おうと、再び腕を伸ばしてきたところで……

 

 

彼の隠していたものが、見えましたよ!

オスカーは僕が来る前に、朝ご飯用に小さなカニをつかまえていたんですね。そのカニをひとりで食べたくて、僕に分け前をあげたくないだけだったんです。

 

 

ケチんぼのタコくんは、僕が朝ご飯を横取りしに来たんじゃないとわかると、ようやく落ちついてごちそうを食べはじめ、その様子を僕に見せてくれました。

 

 

こんなケチなタコくん、初めてお目にかかりましたよ。


おしまい。

TONY WU(写真・文)

トニー・ウー

もともと視覚芸術を愛し、海の世界にも強く惹かれていたことから、1995年以降はその両方を満たせる水中写真家の仕事に没頭する。以来、世界の名だたる賞を次々と受賞。とりわけ大型のクジラに関する写真と記事が人気で、定評がある。多くの人に海の美しさを知ってもらい、同時にその保護を訴えることが、写真と記事の主眼になっている。日本ではフォトジャーナリズム月刊誌『DAYS JAPAN』(デイズ ジャパン)の2018年2月号に、マッコウクジラの写真と記事が掲載された。英語や日本語による講演などもたびたび行なっている。

嶋田 香(しまだ かおり)

東京都出身。東京農工大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。英日翻訳者。主にノンフィクション書籍の翻訳を行う。訳書は『RARE ナショナルジオグラフィックの絶滅危惧種写真集』(ジョエル・サートレイ著/スペースシャワーネットワーク)、『知られざる動物の世界9 地上を走る鳥のなかま』(ロブ・ヒューム著/朝倉書店)、『動物言語の秘密』(ジャニン・ベニュス著/西村書店)、『野生どうぶつを救え! 本当にあった涙の物語』シリーズ(KADOKAWA)など。
翻訳協力:株式会社トランネット